去年の年末にもやりましたが、今年読んだ山に関する本、いわゆる「ヤマボン」のご紹介。
いろんな本は読んだものの、今年のヤマボンは随分と減少しました。ヤマボンって著者なんかを決めてかからないと、出会う機会って少ないんですよね。
(雑誌等は除く)
あと、買うのはほぼ文庫なので、新刊情報などは分かりませんです・・・
てことでまずはコレ。
定本 黒部の山賊 アルプスの怪(伊藤正一著・ヤマケイ文庫)
ヤマボンの超定番、相変わらず今さら的な本ですが、購入したのは実は一昨年。放置していました。
元々は昭和39年に実業之日本社より刊行された本で、その後三俣山荘グループのみで販売、2019年に山と渓谷社より加筆訂正されて新たに文庫化されたものです。
伊藤正一さんはいわば北アルプス深部の山小屋の祖みたいな方で、ここで語るまでもない程の有名なお方。実は10年以上前に三俣山荘に宿泊していた時、たまたま小屋に入られていた御大に会ったことがあるのですが・・・
当時、山の知識に乏しい自分は、周囲の方に「ホラ、あの伊藤正一さんよ!」と教えてもらい、さらにそこで売られていた黒部の山賊を「買ってサイン頂いたら!」なんて言われたものの、全くもってポカン状態でした。その後、どこかの山小屋に置かれていたこの本をパラッと読んだものの、やはりピンとこず、そっと本棚に戻したりしておりました。
たぶんタイトルにある「アルプスの怪」が「怪談ものか何かだろう」という勝手な解釈によって受け付けなかったのが原因かも知れませんが、後々、伊藤さんの事をいろいろと知る機会が増え、文庫本が出る機会にようやく購入したものの、買ったという安心感からなのか、ついつい後回しになっておりました。
黎明期の北アルプス最深部を知る上での絶好の内容なのは間違いないのですが、それに加え、そこで生業を得る山賊たち(本当の山賊ではありませんが)の生き生きとした暮らしぶりを著者独特のユーモラスなタッチで表現。何度読んでも面白く、もっと早く読んでおけば良かったと思わざるを得ない一冊でした。
そんな伊藤正一さんですが、残念ながら2016年にお亡くなりになりました。
三俣山荘で宿泊客の周りを歩いていた伊藤さんは非常に温厚な顔をしていましたが・・・身長、でかかったなぁ。
その流れで2冊目。
新編 黒部の山人(やまど) 山賊鬼サとケモノたち(鬼窪善一朗語り、白日社編集部編・ヤマケイ文庫)
これもヤマケイ文庫での再発本。元は1989年、白日社より刊行されたもの。
鬼窪善一朗氏は「黒部の山賊」に出てくる登場人物のひとり。もちろん彼は山賊ではありませんが・・・「黒部の山賊」が北アルプス深部アレコレ的な読み物なら、この本は鬼窪氏の自分語りのドキュメント的なものでしょうか。
後年は小屋番もされていますが、元々は猟師(歩荷なども)が本職。章としては「ボッカ・ガイド・遭難救助」「イワナ釣り」「猟師」と3部に分けてあるものの、圧倒的に話しの密度が濃いのは猟師の章。
当時は多くの猟師が山に入っており、熊やイワナやウサギやカモシカなどを狩り、生計を立てていた時代。(実はカモシカは当時から禁猟だったらしいのですが) その手法や知恵、行動などが上手くまとめられています。
語りをそのまま纏めてあるので、生々しいところもあります。自分は興味津々で読み進めましたが、動物を殺す方法など、例え猟でもイヤな人には受け付けないでしょうね。もちろん今と昔じゃ時代的な状況は違うので、ある意味歴史書的なものとして読まれる方がいいし、記録として残しておくべき内容だと思います。鬼窪氏の生き様、自分的には非常に面白かったなぁ・・・と。
3冊目。
よくわかる山岳信仰(瓜生中著・角川ソフィア文庫)
登山をする人は意識せざるを得ない、山頂に、麓に、必ずと言っていいほど残っている神社仏閣。
そんな山岳信仰に興味を持った人向けには、まさに打ってつけの一冊かも。
この本が提示する「山岳信仰とは何か」を紐解いていくと、それは日本人の信仰の根源であり、日本人の宗教観も汲み取れるような、そんな内容だと思います。
それほど難しい本ではないので、山に登るために知っておくと、高山低山問わず、山登りに深みが増すはずです。
内容の一部は、今年の御嶽山登山の記事で、チョットだけ紹介しました。
主だったところはこんな感じですが・・・
コレもご紹介。
山が見ていた(新田次郎著・文春文庫)
新田次郎と言えば「孤高の人」「劔岳 点の記」をはじめ、数多くの山岳小説も残した、誰もが知る日本を代表する作家。その著者の15編からなる短編集がこの一冊ですが・・・
これまた新装版の再発本で、1976年、光文社カッパノベルズから刊行されていたものです。
「新田次郎」そして「山」。このキーワードで購入したのですが、この中で山が関係してくるストーリーは僅か2編。なので紹介するべきかは考えましたが、何しろ今年のヤマボン、少ないので・・・
山に関するものは「山靴」、表題作の「山が見ていた」。内容は伏せますが、山岳小説を得意とする著者の本領発揮的な緻密さが読むものの想像力を掻き立ててくれます・・・と言ってもそこは短編、読み足りなさ感もありますが。
後の13編は山には関係ないにしろ、人間の悲哀を「ミステリー」という調理方法でダークに纏めてあります。
てことで、ずいぶん長くなってしましましたが、ここまで読んでる人がいるのかどうか・・・
(内容自体うすいし)
こんな稚拙な文章の自己満ブログ、今年もご覧頂きありがとうございました。
それでは皆さま、よいお年をお迎えください。